このページのテーマである「マージンコール」と「ロスカット」、FXトレーダーにとっては最も聞きたくない言葉かもしれません。
ですが、FXのトレードをする上では、その仕組みを知っておかなければ痛い目に遭ってしまいます。
より安全にトレードを楽しめるよう、しっかりと仕組みを理解しておきましょう。
ポジションと含み益・含み損
FXで「買い」か「売り」どちらかの注文を入れて取引を始めることを「ポジションを建てる」といい、利益・損失が確定するまでは「買いポジション」か「売りポジション」、どちらかのポジションを保有することになります。
ポジション保有中の、未確定の利益を「含み益」、未確定の損失を「含み損」といいます。
また、含み益を確定させることを「利食い」、含み損を確定させることを「損切り」と言います。
米ドル/円の「買いポジション」での取引を例にとると、
【新規注文(買い)】1ドル100円の時に買いポジションを建てる。
【A】為替レートは上昇してAの時点で101円に達し、1円の「含み益」。
【B】しかしその後、為替レートが99円まで下落し、Bの時点で1円の「含み損」。
【決済注文(売却)】その後は再びレートが上昇に転じ、101円まで上昇。決済注文をしてポジションを解消し、1円の利益が確定。
証拠金の種類と維持率について
必要証拠金
ポジションを建てるときに必要となる担保を「必要証拠金」といいます。
必要証拠金はFX会社によって異なりますが、レバレッジ25倍の場合は取引金額の4%、レバレッジ10倍の場合は取引金額の10%が目安となります。
詳細はこちらの記事をご参照ください。
有効証拠金
実際に取引が始まると、為替レートの変動に応じて含み損・含み益が発生します。
FX会社に預けている証拠金に、保有しているポジションの含み益を加え、含み損を差し引いたものを「有効証拠金」といい、以下の計算式で求めることができます。
有効証拠金=証拠金 + 含み益 ⁻ 含み損
ですから、ポジションを保有しているとき、有効証拠金は含み益・含み損に応じて変動することになります。
余剰証拠金
余剰証拠金とは新たにポジションを建てるときに利用できる証拠金の残高となっており、以下の計算式で求めることができます。
余剰証拠金= 有効証拠金 – 必要証拠金
証拠金維持率
証拠金維持率とは、取引額に対して証拠金が占める割合を指し、これがFX会社の定める基準を割り込むと、ポジションを維持できなくなることがありますので、注意が必要です。
証拠金維持率は以下の計算式で求めることができます。
証拠金維持率=有効証拠金 ÷ 必要証拠金
証拠金と維持率の変動
例えば、取引のために10万円の証拠金を入金し、25倍のレバレッジをかけて1ドル100円で1万ドル分のポジションを持ったとしましょう。
25倍のレバレッジをかける際の証拠金の目安は取引額の4%ですので、
必要証拠金=100円×1万ドル×4%=4万円
①取引開始後、予想通りの方向にレートが動き、5万円の含み益が発生した場合
有効証拠金=証拠金(10万円)+ 含み益(5万円)=15万円
余剰証拠金=有効証拠金(15万円) – 必要証拠金(4万円)= 11万円
証拠金維持率=有効証拠金(15万円)÷ 必要証拠金(4万円)= 375%
②予想に反する方向にレートが動き、5万円の含み損が発生した場合
有効証拠金=証拠金(10万円)- 含み損(5万円)= 5万円
余剰証拠金=有効証拠金(5万円) – 必要証拠金(4万円)= 1万円
証拠金維持率=有効証拠金(5万円) – 必要証拠金(4万円) = 125%
マージンコール
マージンコールとは、為替レートの変動により有効証拠金が減り、証拠金維持率が低下したことを知らせる通知です。
マージンコールが発生する基準となる証拠金維持率はFX会社によって異なり、その基準値を割り込むと通知が来るという仕組みになっています。
※マージンコールはすべてのFX会社で行われるわけではなく、マージンコールの制度自体がないFX会社もあります。
マージンコールが発生すると…?
マージンコールが発生した際は、保有しているポジションを維持するために、指定された期日までに証拠金維持率を引き上げなくてはなりません。
証拠金維持率を引き上げるためには以下の2つの方法があります。
①FX口座に追加の証拠金を入金する
②保有中のポジションの一部を解消する
期日までに①、②の処置が行われない場合は、FX会社によって自動的に決済が行われ、損失が確定します。
ロスカット
マージンコールをそのままにしておく、もしくは含み損がさらに拡大し、FX会社が定める証拠金維持率の基準を割り込むと、自動的に決済が行われ損失が確定します。
これを「ロスカット」といいます。
ロスカットが執行される基準となる証拠金維持率はFX会社によって異なりますので、口座開設をしたFX会社の基準を確認しておくようにしましょう。
例えば、必要証拠金10万円で、証拠金維持率70%をマージンコール、30%をロスカットの基準としているFX会社の場合、
含み損7万円、有効証拠金3万円となった段階でロスカットが行われます。
ロスカットは投資家を守るためのもの
損失が強制的に決済される「ロスカット」、FX会社の意地悪とも思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
証拠金の範囲内に損失を限定できるロスカットは、投資家を守るための機能なのです。
ロスカットの基準は自分自身で設定することもできます。
損失を限定するための注文を「逆指値注文」「損切り注文」「ストップロスオーダー」などといいます。
つまり、「いくらになったら、損失を確定してほしい」という注文を入れておくことが可能ということです。
マージンコールやロスカットがかからない範囲に損失を限定するために、取引の際には必ず損切り注文を入れておきましょう。
まとめ
最後にこのページの要点をまとめます。
■FXで取引を始めることを「ポジションを建てる」という。
■取引を「買い」で始めた場合は「買いポジション」、「売り」で始めた場合は「売りポジション」を保有することになります。
■ポジションを保有しているとき、未決済の利益を「含み益」、未決済の損失を「含み損」という。
■含み益を確定させることを「利食い」、含み損を確定させることを「損切り」という。
■必要証拠金
FXの取引を始めるために必要となる担保。
■有効証拠金
証拠金に含み益を加算し、含み損を差し引いたもの。
■余剰証拠金
新たにポジションを建てるときに利用できる証拠金残高。
■証拠金維持率
取引額に対して証拠金が占める割合。FX会社の定める基準を割り込むと、ポジションを維持できなくなるので注意が必要。
■マージンコール
FX会社が定めた証拠金維持率の基準を下回ったことを投資家に伝える通知のこと。
マージンコールが発生したら期日までに
①FX口座に追加の証拠金を入金する
②保有中のポジションの一部を決済する
のいずれかの処置を行い、証拠金維持率を引き上げなければ、強制的にポジションを決済されてしまう。
■ロスカット
マージンコールをそのままにしておく、あるいは含み損がFX会社の定める基準に達した時に行われる強制決済を「ロスカット」という。
ロスカットは損失を証拠金の範囲内に限定し、投資家を守るための仕組み。
ロスカットの基準は投資家自身でも設定できる。マージンコールやロスカットが発生しないような価格に損切り注文を入れておくことが重要。
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